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【ブログ】くろまろ塾 大学連携講座 大阪芸術大学編 「無限への憧憬 ドイツ・ロマン派絵画の騎手C.D.フリードリヒ」後編
【ブログ】くろまろ塾大学連携講座 -大阪芸術大学編-美術編
無限への憧憬 ドイツ・ロマン派絵画の騎手C.D.フリードリヒ(後編)
1.今回のレポート
こんにちは。くろまろ塾運営ボランティアスタッフ 記録担当の栗栖です。
今回は、ー大阪芸術大学編ー 「近代における想像力の覚醒 ~絵画と音楽における初期ロマン派の世界~」(全2回)の内、3月14日開催の第1回 美術編(後編)のレポートです。講座では、フリードリヒの絵画と歴史的背景、絵の特徴などについて、数十枚の画像を用いて解説がなされました。
以下は、その抜粋です。
次の内容は前編です。出来れば前編からをお読み下さい。
2.講師
3.講演の報告
3.1 ドイツ・ロマン派絵画とは
3.2 フリードリヒの代表作
3.3 フリードリヒと同時代のドイツ・ロマン派の画家
3.4 泉谷先生を絵画に導いたフリードリヒの絵との出会
3.5 フリードリヒの描く風景画
3.6 フリードリヒの主要モチーフ
● 震える樹の枝 フリードリヒが描くモチーフは、どれも強い象徴性を帯びている。それらは常に何らかの方法でその存在が強調され、その結果、画面の中でそれらは孤立し、周囲の世界と対峙することとなります。フリードリヒの画面にただならぬ緊張感が漂う所以です。例:前編 「画像2)樫の森の修道院」 参照
● 山 山は崇高の概念に最も適したモチーフです。ぼかしやグラデーションでこれが表現されています。
「画像11)ボヘミア風景」 参照
画像11)ボヘミア風景 1808年頃
● 後姿の一人の人物 「画像12)朝日を浴びる女」 の後ろ姿の一人の人物は、どのような効果があるのかを考えながら見ましょう。
きっと、人の後ろ姿ではなく風景を見るでしょう。もし、前姿であればどう見るでしょうか?
画像12)朝日を浴びる女 1818~1820年頃
● 月と二人組の人物 「画像13)月の出を眺める二人の男」 の月は何を象徴しているのでしょう? また、何故フリードリヒは二人組の男たちが月の出を眺める光景を繰り返し描いたのでしょう?
二人の男は、集団心が強く、連帯や心が通じ合う 「友」 を表そうとしたのではないでしょうか。
画像13)月の出を眺める二人の男 1817年
● 後姿の複数の人物 フリードリヒは1818年、44歳の時に商人の娘カロリーネと結婚します。境遇が大きく変化したことで、例えば、「画像14)海辺の月の出」 のように色使いが穏やかとなると共に、印象派が描かなかった 「光」 を描くなど、画風が大きく変わります。
画像14)海辺の月の出 1822年頃
● 人のいない光景 「画像15)停泊する船」 の人のいない光景からあなたは何を感じるだろうか?
もしかしたら人のいない光景を描くことこそ、フリードリヒが最もやりたかったのではないだろうか。
画像15)停泊する船 1815年
4.フリードリヒの影響を感じさせる日本の画家
◆ 東山魁夷 「画像16)残照」 の東山魁夷の絵は、フリードリヒの 「画像17)リーゼンゲルビゲ」 とテーマも構図もそっくりとなっている。
しかし、東山魁夷が落葉樹を描いた 「樹」 では、フリードリヒと違って枝が震えておらず、穏やかな表現としている。
画像16)残照 1947年 東山魁夷
画像17)リーゼンゲビルゲ フリードリヒ
◆ 泉谷淑夫(今回の講師) 泉谷先生がフリードリヒの絵から学んだものは、「殺風景の美」 「荒涼感」 「空の表現力」 とされました。先生の作品で 「海からの風」 「霧」 「警告」 などの5点が紹介されました。「画像18)愁傷のモニュメント」 はその1例です。
余談ながら、NET検索でも多様でファンタジックな多くの作品を見ることが出来ます。
画像18)愁傷のモニュメント1976年 泉谷淑夫
5.フリードリヒの人物像
◆ 「画像19)素描による自画像」 では、フリードリヒは内省的で信心深い愛国主義者であったとされました。 また、講演後の質問に答えて、「小さい頃の辛い経験や、ドイツ北方で半年間は寒いゲルマン地方で育ち、温暖で明るい外国にも行ったことがない、などが、フリードリヒの絵の暗さの元になっているのかも・・・」 とされました。
画像19)素描による自画像 フリードリヒ
◆ 誠実で生真面目な感じの泉谷先生。講演では、次々と投影するフリードリヒの絵の要所で 「皆さんはこの絵をどう思いますか?」 などの質問を行なって、参加者の反応を見ながら進められました。また、フリードリヒが、如何に素晴らしい画家であるかを力説して講座を締めくくられました。
< 補 足 > 第2回 音楽編の講座で引用されたフリードリヒの絵
◆ 3月21日開催の第2回音楽編の講座で、講師の今川裕代先生から 「音楽編 さすらい人シューベルトのリーフレット」 に引用された背景の絵が、フリードリヒの作品であると教えていただきました。 「画像20)参照」
そして、「さすらい人シューベルトも、今は手前の暗い社会にあっても、光の道に沿って前に進むと明るい世界が広がっている」 との説明が行なわれました。これを持って、今回のシリーズの繋がりが理解された次第です。
画像20)音楽編 さすらい人シューベルトのリーフレット
レポートは以上です。 最後まで読んでいただいてありがとうございました。
配付資料:泉谷先生による講義のレジュメ