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【ブログ】くろまろ塾 大学連携講座 大阪芸術大学編 「無限への憧憬 ドイツ・ロマン派絵画の騎手C.D.フリードリヒ」前編
【ブログ】くろまろ塾大学連携講座 -大阪芸術大学編-美術編
無限への憧憬 ドイツ・ロマン派絵画の騎手C.D.フリードリヒ(前編)
1.今回のレポート
こんにちは。くろまろ塾運営ボランティアスタッフ 記録担当の栗栖です。
今回は、ー大阪芸術大学編ー 「近代における想像力の覚醒 ~絵画と音楽における初期ロマン派の世界~」(全2回)の内、3月14日開催の第1回 美術編(前編)のレポートです。講座では、フリードリヒの絵画と歴史的背景、絵の特徴などについて、数十枚の画像を用いて解説がなされました。
以下は、その抜粋です。
2.講師
大阪芸術大学 美術学科 教授 「泉谷淑夫」先生。1983年 横浜国立大学大学院修了。2002年 小磯良平大賞展優秀賞受賞。一陽会運営委員。岡山大学名誉教授。
画像1)オープニング
3.講演の報告
記事は、泉谷先生の投影画像や解説された内容を、ほぼそのまま書き写したものです。
3.1 ドイツ・ロマン派絵画とは
◆ ドイツでは、19世紀初頭のナポレオンの侵攻に伴うナショナリズムの高揚に伴って、独自のロマン派絵画が誕生し、ルンゲやフリードリヒらによって固有の表現が追求されていった。フリードリヒの絵画を特徴づけるのは「美」に代わる「崇高」の概念とされ、宗教的な雰囲気を画面にもたらしてドイツ国民を鼓舞する役割を果たした。
◆ 後にヒトラーがフリードリヒの絵画を政治利用したことから、戦後は冷遇された側面がある。しかし、現象の内面に迫る深い精神性を湛えたその表現は、シュルレアリストたちに再発見され、ダリやマグリット、エルンストらに大きな影響を与えた。1970年以降、世界的に再評価が進められている。
3.2 フリードリヒの代表作
◆ フリードリヒの代表作は、「画像2)樫の森の修道院」、「画像3)海辺の僧侶」 で、この2つは対作とされる。これらの絵は極限的で強い緊張感を強いるので、従前の調和を重視する「美」の概念では推し量ることが出来ず、「崇高」の概念で捉まえることで始めてその良さや価値がみえてくる。
画像2)樫の森の修道院 1808~1810頃
画像3)海辺の僧侶
3.3 フリードリヒと同時代のドイツ・ロマン派の画家
◆ 画像4)に4人の代表作を示す。aルンゲ(朝・小)、bエンケル(朝)、cエーメス(サンルメ湾の月夜)、dカールス(早朝の鐘)。 共通する特色は画面を支配する象徴的な光とされる。
画像4)フリードリヒと同時代の画家の作品
3.4 泉谷先生を絵画に導いたフリードリヒの絵との出会
◆ 「山の中の十字架」 との出会い それは、高校美術の教科書の掲載図版 「画像5)山の中の十字架」 によってもたらされた。シンメトリーの構図、画面を支配する神秘的な光、画面に漂う独特の雰囲気、緊張感と上昇感など、すべてが新鮮であった。そして、これこそが私が求めている絵画世界であると直感した。(注:画像の中心部を拡大・凝視すると十字架が見えてきます)
画像5)山の中の十字架:フリードリヒ 1811年頃
◆ 「氷解」との出会い その後も、ハンブルグ美術館で 「画像6)氷解」 に出会って再度の強い衝撃を受けた。この作品は、以前は「希望号の難破」と呼ばれていたが、他の著名画家の難破の絵と比較すると特異性が見えてくる。即ち、ターナーの 「画像7) 難破船」 と比べると、フリードリヒの絵には人間の活動による救いというものがなく、静けさが死の恐怖を伴って支配している。
画像6)氷海(旧・希望号の難破):フリードリヒ 1824年頃
画像7)難破船:ターナー 1808年
3.5 フリードリヒの描く風景画
◆ 斬新な構成 フリードリヒの 「画像8) 山上の十字架」 は、画面が前景のみで構成され唐突で異様な感じがする。他方、クロード・ロランの 「画像9)風景画」 は伝統的な描き方で、画面が前景・中景・後景で構成され安定している。フリードリヒは、この絵を額縁に入れて教会の祭壇に飾るとして描いたが、斬新すぎて当時の人々には容易に理解されなかった。
画像8)フリードリヒの山上の十字架 1808年
画像9)クロード・ロランの風景画 17世紀
◆ 小さな人物の描き込み 例えば、「画像10)漁師のいる海岸」 のように、風景画において構造上はほとんどいてもいなくても変わらない小さな人物を、あえて画面に描き入れている。
その理由は、大自然に対して人間が極めて卑小な存在であること、或いは、大自然を破壊する存在である人間を忌避する思いを伝えるためと考えられ、それまでの西洋の人間中心主義とは大きく異なっている。
画像10)漁師のいる海岸 1807年
以上で前編は終了です。
以下は後編の内容です。 是非、お読みください。
3.6 フリードリヒの主要モチーフ
● 震える樹の枝
● 山
● 後姿の一人の人物
● 月と二人組の人物
● 後姿の複数の人物
● 人のいない光景
4.フリードリヒの影響を感じさせる日本の画家
5.フリードリヒの人物像
< 補 足 > 第2回 音楽編の講座で引用されたフリードリヒの絵