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市指定 不動明王立像

印刷ページ表示 更新日:2019年4月17日更新
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区分(有形文化財)種別(彫刻)指定番号(彫20)

市指定文化財 木造 不動明王立像

mokuzou hudou-myouou-ryuuzou 像高95.2cm、光背高138.0cm、台座高43.0cm 一躯

所在地 河内長野市岩瀬
所有者 下岩瀬薬師寺保存会
時代 平安後期
指定年月日 平成22年4月7日

市指定文化財 木造 不動明王立像の画像1市指定文化財 木造 不動明王立像の画像2

 薬師寺は、市内南部の岩瀬に所在する密教系寺院であったが、現在は融通念佛宗に改宗している。本不動明王は、本堂の三間厨子中央に祀る本尊薬師の向かって右側脇侍である。向かって左側の毘沙門天と対をなし、不動・毘沙門天を両脇士とする例は、古くは天台系寺院に多くみられる。
 本像は、右手に宝剣、左手に羂索(けんさく)を執り、火焔光背を背にして岩上に立つ、通期の不動の姿である。上半身を裸形とし、左肩に巾の広い条帛(じょうはく)をかけ、腰に裳を着け、金銅製の臂釧・腕釧・足釧を付ける。頭部は巻毛、弁髪(べんぱつ)を左肩に垂らし、額に水波のごとき皺があり、左眼を少し閉じて右目を開き、下の歯で上唇を噛み、口を結び上下に牙を表す。これは、9世紀末に台密の安然が説いた「不動十九観」の姿であり、弘法大師が請来した総髪で両目を見開き上の歯で下唇を噛む不動とは異なる。
 その構造は、頭体の根幹部を正中で左右に矧ぎ付け、内部を内刳り、彫眼、古色仕上げとする。そこに両肩・両肘・右手首(左手首は不明)・弁髪の遊離部分・両足の甲より先と両足先(足ほぞは共木)に各別材を寄せる。現状では寄木造か一木割矧造かは不明である。三道下で割矧いだ割首の技法である。持物(宝剣・羂索)、臂釧・腕釧・足釧、古色仕上げの彩色、台座、光背は後補である。左足甲より先、右足指先は欠失している。
 腰をわずかに捻り、左足をやや前に出すなど、少し躍動感の兆しが見られるものの、球状の頭部、全体にゆったりとした気品が漂う穏やかな造形、彫眼の技法より、当寺の大日如来と同時期である12世紀後半頃と考えて大過ないであろう。大日如来と同様、河内長野市の中世の美術と歴史を考える上で貴重な文化財である。