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2018年度に紹介した絵本

印刷ページ表示 更新日:2019年6月12日更新
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4月号

お花見シーズン到来!今年は桜の開花が早く、ウキウキ気分も早々にやってきた感じです。4月は春の訪れを感じさせる果物、いちごの絵本を紹介します。

 

 

1.『くまとりすのおやつ』きしだえりこ ぶん ほりうちせいいち もみこ え(福音館書店)2008年2月20日

 きいちごがたくさんなっているのを見つけたくまとりすは急いで出かけます。りすは小さなリュックに1つだけ、くまは大きなかごにたくさんつみました。そして。

 リズミカルで簡潔な文が心地よい赤ちゃん絵本です。1967年に色の絵本シリーズ(赤の絵本)として出版され、近年になって再版されました。ほりうちもみこさんは当時2歳だった堀内誠一氏の娘さんです。一緒に紙をちぎりながら制作したのでしょう。赤・黒・茶・緑の4色のみを使ったちぎり絵は輪郭線が柔らかで、幼い子らの絵本にぴったり。食べる幸せ、友達といる幸せを感じる絵本です。

(1、2歳くらい~)

くまとりすのおやつの表紙の画像

 

 

2.『いちご』新宮晋(文化出版局)1975年5月10日

 自然エネルギーで動く立体造形の芸術家として国際的に知られた新宮晋氏の絵本デビュー作です。

 風・雨・太陽に育まれたいちごを宇宙の中に生きる一つの生命体と捉え、同時にいちご自身も内なる宇宙を抱えて息づいているとする本作のテーマは、造形作家としてのテーマと重なります。いちごの生命力、宇宙の生命力を感じる一冊です。

 表紙の視覚的インパクトは大きく、読者に「読め!」と迫ってくるよう。5ヶ国語で書かれた文も特徴的です。これを読めば、何気なく食べているいちごのイメージが覆されるかもしれませんよ。

(小学校5、6年生くらい~)

 

 

 

 

 

5月号

ゴールデンウィークをいかがお過ごしですか?遊び疲れたら絵本でちょっと一休み。今月は〈おつかい〉をテーマにした絵本をお届けします。

 

 

1.『ちょっとまって』岸田今日子 さく 佐野洋子 え(福音館書店)1998年5月20日

 ある春の朝、こねずみのシムくんは母さんにおつかいを頼まれました。途中で忘れないようにオレンジ色のリボンも首に結んでくれました。道々タンポポやリスやキツネ、カメにも伝言を頼まれ、その度に色とりどりのリボンがシムくんに結ばれて。

 作者が自身の娘まゆさんに語っていたお話を絵本化した作品です。優しい語り口の文章とほのぼのとした色鉛筆画が温かな親子の時間を想像させます。

 おたんじょうびのお(オレンジ)、ミミズのみ(みどり)、まいごのま(まっか)、チョコレートのち(ちゃいろ)、むずむずのむ(むらさき)は言葉遊びと同時にクイズのような色合いで読者を楽しませてくれます。

 それにしても、シムくんが通ってきた道を眺めただけで全部わかってしまうまゆさんはスーパーガール!どんな風に成長したのか、ファンならずとも気になるところです。

(4、5歳くらい~)

ちょっとまって

 

 

2.『よじはん よじはん』ユン ソクチュン ぶん イ ヨンギョン え かみやにじ やく(福音館書店)2007年5月25日

 まだ時計が珍しかった頃、小さな女の子がお母さんに隣の店に行って時間を聞いてきてと頼まれました。「よじはん」と教えてもらったので、女の子は「よじはん よじはん」と唱えながら歩いて行くと。

 植民地時代に書かれた詩を絵本化したものです。女の子は隣の家からの帰り道、水を飲んでいるにわとりや、ありの行列、トンボなど興味をもった方向へ次々と寄り道してしまいます。1960年代を設定して描かれた絵は温かく味わいがあり、それでいて女の子が気をひかれる方向へ読者も誘って次の頁をめくらせる力強さを持っています。

 ぜひ、親子で会話しながら絵を楽しんでください。短い文の行間を絵がたっぷり満たしてくれることでしょう。

(5、6歳くらい~)

よじはんよじはん

 

 

 

 

 

6月号

今年もじめじめした梅雨がやってきました。今月は、そのうっとうしさを吹き飛ばすような素敵な〈かさ〉の絵本2冊を紹介します。

 

 

1.『ヨンイのビニールがさ』ユン・ドンジェ 作 キム・ジェホン 絵 ピョン・キジャ訳(岩崎書店)2006年5月30日

 月曜日の朝、ヨンイは学校へ行く途中、雨に濡れながら塀にもたれて眠っている物乞いのおじいさんを見つけました。ヨンイはためらいつつ粗末な自分のビニール傘をさしかけて。

 人々の暮らしがまだそれほど豊かではなかった1980年代の韓国を舞台にした絵本です。

ヨンイのビニール傘はいかにも安物で破れもあり、彼女自身もさほど豊かではない暮らしをしているだろうことを思わせます。それゆえに、老人の痛みを自分のものとして感じることができたのでしょう。老人の横に置かれた空き缶と同じ空き缶がヨンイの家の窓辺にも置かれています。ヨンイと老人の心根他者への思いやりや正直さが同じであることの象徴かもしれません。

 暗く重い色調の雨の情景の中、ヨンイの黄色い服と緑のビニール傘が際立ち、ヨンイの勇気と優しさを強く印象づける秀作です。

(小学校5、6年生くらい~)

ヨンイのビニールがさ

 

 

2.『かさどろぼう』シビル・ウェッタシンハ 作・絵 いのくまようこ 訳(徳間書店)2007年5月31日

 ある日、キリ・ママおじさんは「なんてきれいで便利なものだろう」と町でかさを買いました。キリ・ママおじさんの住む村の人達はかさを見たことがなかったのです。ところが、村に帰って店でコーヒーを飲んでいるうちにかさを盗まれてしまいました。その後もかさを買って帰るたびに盗まれてしまったキリ・ママおじさんは一計を案じて。

 スリランカを代表する絵本作家による作品です。土の香りがするような素朴なタッチの絵が人々の暮らしを豊かに描きます。伸びやかな線はおおらかな国民性をも表現するようです。また、ユーモアたっぷりのストーリー展開も魅力です。

 かさどろぼうは誰だと思いますか?キリ・ママおじさんも読者も、そしてどろぼうまでうれしくなってしまうようなラストをどうぞお楽しみに。

(小学校2、3年生くらい~)

 

 

 

 

 

7月号

今年はことのほか暑い夏ですね。そんな夏に水遊びの絵本をご紹介!読めば水遊びしたくなること間違い無しの2冊です。

 

 

1.『じゃぐちをあけると』しんぐうすすむ さく(福音館書店)2009年6月10日

「じゃぐちを あけると みずが でる」

日常のありふれた行為がこれほど楽しいものだったのか、と思わせる絵本です。

じゃぐちを見上げたり、正面から見据えたり、水が変化し始めると画面からじゃぐちが消えたりあくまで幼児の目線で描かれています。クレパスで描かれた字も柔らかで温かみがあり、親しみやすい印象です。

シンプルな絵と言葉がダイレクトに伝わる一冊です。

(2、3歳くらい~)

じゃぐちをあけると

 

 

2.『みずまき』木葉井悦子(講談社)1994年6月24日

大胆なタッチの絵と太く大きな黒い字で書かれたタイトルの表紙が目をひく絵本です。

ムンムンするような夏の雰囲気が色鮮やかに迫力のある絵で表現された庭、そこへ元気な女の子が登場します。

「にわのみなさん おきてください。あめだぞ あめだぞ。」

ホースから勢いよく出た水は女の子の生命力を表し、庭の生き物たちに生気を与えます。「たぴ たぴ」「きゅる きゅる」「しゃく しゃく」など特徴的なオノマトペが楽しさと躍動感を加えます。女の子の奔放な感じも子どもらしく、ラストは読者も満足感を共有できるでしょう。

茶色の見返しが水まきの後、水色の裏見返しに変わる心遣いも素敵な絵本です。

(4、5歳くらい~)

 

 

 

 

 

8月号

8月に入って、そろそろ夏休みの宿題が心配になってきた人もいる頃でしょうか。

今月はちょっと変わった図鑑絵本を紹介します。自由研究のヒントになるかもしれませんよ。

 

 

1.『イヤムシずかん』盛口満 文と絵(ハッピーオウル社)2014年5月12日

嫌われ者の虫ばかりを集めて紹介する科学絵本です。

虫好きと虫嫌い双方の意見をくみ取りつつ、イヤムシ(嫌いな虫はイヤな虫)の魅力を伝える手法は、誰もが嫌いな虫は実は人気者なのではないか、との逆転の発想から生まれたもの。クイズ形式の紹介の仕方も飽きさせない工夫です。また、虫は精密に、その他はマンガチックに描かれたメリハリのある絵にも好感が持てます。

この本を読めば、虫好きはもっと虫好きに、虫嫌いはより熱く嫌いな理由を語れるようになるかもしれませんよ。

(小学校2、3年生くらい~)

イヤムシずかん

 

 

2.『えほん図鑑へんてこ! みずのぜつめつどうぶつ』はたこうしろう(アリス館)2017年8月10日

水族館に行ったところが、太古の海に迷い込み。

古生代から新生代まで、太古に絶滅した海洋生物を軟体動物、脱皮動物、硬骨魚類など種類ごとに紹介する絵本です。男の子がアンモナイトやリードシクティスなどの古代生物に乗りつつ海を回遊してたくさんの絶滅動物に出会うという設定で全体がまとめられています。よくわからない点も多い古代生物なので、マンガチックな絵がかえって想像を膨らませるようです。また、解説が簡潔でわかりやすいのも魅力。

絶滅生物の入門書として親子で楽しめる一冊です。シリーズ本の『りくのぜつめつどうぶつ』もあわせてどうぞ。

(小学校3、4年生くらい~)

えほん図鑑へんてこ!みずのぜつめつどうぶつ

 

 

 

 

 

10月号

新米の季節です。この時期になるとほかほかのご飯をほおばりながら、日本人に生まれてよかったと思う方も多いのではないでしょうか。

10月は米をテーマに2冊の絵本を紹介します。

 

 

1.『稲と日本人』 甲斐信枝 さく 佐藤洋一郎 監修(福音館書店) 2015年9月5日

 おにぎりは好きですか・・・やさしい語り出しながら、稲と日本人がいかに関わり、いかに共生してきたかを論じた重厚な科学絵本です。

 稲の伝来、飢饉について、自然災害と闘う人々の知恵と努力、稲作の一年、失われた多様性など、10数年の取材がぎゅっと詰まった内容は大人にも読み応えがあります。また、内容にふさわしいものをと作者がこだわった油絵が田んぼや稲を豊かに描き出します。

 作者は雑草や虫など小さな生き物に寄り添って40年余り絵本を作ってきました。その集大成ともいえる作品です。じっくり味わってください。初版本はキャンバスの絹目まで見える高い印刷技術が用いられています。こちらにも注目です。

                           (小学校4、5年生くらい~)

稲と日本人

 

 

2.『にっぽんのおにぎり』 白央篤司(理論社) 2015年6月

 あなたの好きなおにぎりは、どんなおにぎりですか?

北は北海道の「鮭のおにぎり」から、南は沖縄の「ポーク玉子おにぎり」まで、47都道府県ゆかりのおにぎりがずらりと紹介された絵本です。

 各地方で愛されているおにぎりも、郷土食でアレンジされたおにぎりも、みな美しくおいしそう! 写真の良さが光ります。ちなみに、大阪府のおにぎりは出汁をとった後、きざんで醤油で炊いた昆布のおにぎり。大阪の倹約精神を象徴するものとして選んだ具材とのことです。

 あなたの故郷のおにぎりは、どんなおにぎりですか?きっとそのページを開かずにはいられないことでしょう。

                           (小学校3、4年生くらい~)

おにぎり

 

 

 

 

 

11月号

行楽シーズンまっ盛り! 連休に楽しい計画を立てている方もいらっしゃるのではないでしょうか。でも、忙しくてどこにも行けないという方は絵本の世界に出かけてみませんか?

11月は世界一周をテーマに2冊の絵本をお届けします。

 

 

1.『アップルパイをつくりましょ りょこうもいっしょにしちゃいましょ』 マージョリー・プライスマン さく かどのえいこ やく(BL出版) 1996年1月20日

 アップルパイをつくりましょっと。マーケットに行って、材料を買って・・・ところが、マーケットはお休みで・・・。

 アップルパイの材料を求めて世界を旅し、アップルパイができるまでのお話です。主人公の女の子の一人称による語り(文)がリズミカルで、明るく楽しい絵と合わさって、とても軽やかな印象です。ようやく完成し、友達も招待して、さあ食べましょうという時にアップルパイに添えるバニラアイスがなかったら・・・。

 巻末にアップルパイの作り方も掲載されています。実りの秋です。絵本を読んだらアップルパイ作りにチャレンジしてみませんか?

(小学校2、3年生くらい~)

 

 

 

2.『オルガの世界一周』 ローレンス・ブルギニョン 作 カンタン・グレバン 絵 石津ちひろ 訳(平凡社) 2007年9月25日

 ある日、牛のオルガは空を見上げながら鳴きました。「もう~くさなんてたべたくな~い!」草ばっかりの牧場に飽き飽きしたオルガは旅に出ました。汽車に乗ったり、歩いたり、牛が引く荷車に乗ったり、そこでオルガが見たものは・・・。

 牛のオルガが世界を旅して、自分の牧場がどんなに素敵な場所かを知るお話です。のんびり、ゆったりした旅は文章だけなら冗漫な印象になりそうなところ。けれど、帽子やスカーフなどちょっとした小道具で動物たちの性格をも描き出す巧みな絵が、わくわくするような旅を演出しています。ブンブンうるさいお供のハエの存在もいいスパイスに。

 見返しにはオルガが旅した行程が図解されています。世界をぐるっと一周して自分の牧場に帰ってきたと理解できるオルガって、ハエよりずっと賢いと思いませんか?

(小学校1、2年生くらい~)

 

 

 

 

 

3月号

3月は引越の季節です。今年は引越ををする人が多く、業者の手が回らないとニュースでも耳にしますね。

絵本の世界にも引越をテーマにしたものがたくさんあります。今月はその中から2冊を紹介します。

 

 

1.『トヤのひっこし』 イチンノロブ・ガンバートル 文 バーサンスレン・ボロルマー 絵津田紀子 訳(福音館書店) 2015年1月25日

 春の終わりのある朝、モンゴルの草原に住むトヤの一家が引越を始めます。ゲルも家財道具もチーズもラクダの背中にのせて出発です。夜のオオカミにおびえ、太陽が照りつけるゴビ砂漠を渡ったところにあったのは・・・。

 モンゴルの遊牧民の暮らしを描いた絵本です。解体や組み立てが簡単なゲル(家)や家畜を連れた大移動は、厳しい天候や険しい山など困難続き。モンゴル出身の夫妻による作品は、それをありのままに描きます。横長の紙面は広大な草原や砂漠をよく表して美しく、移動中の家畜やその土地に住む小動物たちの動きや表情も豊かです。ことに見開きいっぱいに広がる虹は格別です。

 さあ、トヤと一緒に出発しましょう! 家族で乗り越えた引越の先には喜びが待っていますよ。

(小学校1、2年生くらい~)

トヤのひっこし(福音館書店)

 

 

2.『おうさまのおひっこし』 牡丹靖佳 作 (福音館書店) 2012年5月

 ある夜、お供たちが窮屈そうに寝ているのを見た王さまは大きなベッドを作らせます。ところが、ベッドが大きすぎてお城に入りません。王さまはもっと大きなお城に引っ越すことにしました。ところが・・・。

 はずかしがりやの王さまとあわてんぼうのお供たちの珍道中が楽しい絵本です。引越の途中で数々の事件が起こり、新しいお城に着いた時には元のベッドだけになっているという皮肉なストーリー。けれど、心優しい王さまと一生懸命なお供たちを見ているとクスッと笑えて、とても幸せな気持ちになれます。

 二頭のロバが幕を開けて物語が始まるおしゃれな作りは大人にも魅力的な一冊です。

(小学校3、4年生くらい~)

おうさまのひっこし(福音館書店)